海の花は雪
−出発当日−

「…じゃあね、ユラ…体に気をつけてね…」

白いローブの執務着姿のフレアが、立ち上がるとそう言った。

「うん…フレアも元気でね…」

そう言って右手を差し出すと、フレアは僕の手を握りしめた。

一瞬、笑顔を見せた後、すぐにフレアはそっけなく手を放すと、背中を向けて…

「…行ってらっしゃい」

と、手をふった。

「行って来ます…」

僕は苦笑しながら、執務室の大きな机の向こうで、背中を向けてしまったフレアに向かって、手をふり返した。

退出する時…見慣れたその執務室をもう一度見渡してみると、まるで植物園の中に作ったんじゃないかと思うほど、たくさんの緑と色あざやかな花々に囲まれていた…

そして執務室の出口のそばに、ひっそりとたたずんでいる、ロイズの姿が目に入った。

「…行ってらっしゃい」

「…行って来ます、ロイズ…」

めったに笑わないロイズが、とても優しい顔で微笑んでいた…
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