海の花は雪
懸命に、笑顔を崩さないように言ったフレアに向かって、淡々とした静かな口調で、ロイズはたずねた。

「…もう…いいの?」

「ええ、私は一人でも大丈夫よ?どこへでもロイズの好きな所に行って、好きなように…」

そこでフレアの言葉がつまり、続く先のセリフが涙に変わった…

小さな女の子のようにしゃがんで、顔をおおってしまったフレアを見て、僕はオロオロとするばかりで、ロイズとフレアを交互に見る事しか出来なかった。

…フレアが、そんな風に考えていたなんて…

「…分かった…」

ロイズの低い声が、フレアの上にかけられた。

思わずロイズの顔を見て、その表情にハッとすると…僕は動けなくなってしまった…

ロイズのそんな顔を見るのは、初めてだったから…

黙って立ち去るロイズを、ただただ僕は見送る事しか出来なかった。


フレアは、その顔を見ていないから知らないけれど…

ロイズはあの時、とても哀しそうに笑いながら…泣いていたんだよ?フレア…
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