海の花は雪
ガチャガチャという音が遠くで聞こえて、人が入って来る気配がした。

明かりがついたのか、少しまぶしい…

それでも、重くなったまぶたを開ける事が出来ない…頭の中がボンヤリとしている…

どれぐらいそうしていたのか…

気づくとハルが、たたんだ洗たく物を持って、自分の側に立っていた。

「あ、目覚めた?ちょうど乾いたよ、深谷君」

そう言いながら、ソファーに洗い立ての制服を置いてくれた。

「…ありがとう、ハル」

「あーそれから、これ深谷君のでしょう?書庫に置いてあったの、これだけだから」

テーブルの上に、見慣れた自分のカバンが置いてあるのに、はじめて気づいた。

「…あれ、どうしてここに?」

「深谷君、荷物図書館に置きっぱなしかなーと思ってさ」

そう言って、ハルは笑った。

「手ぶらで帰ったらヤバイでしょ?…じゃ、着替えたら行こうか?」

「え?どこに?」

「深谷君の家。自転車学校から取って来たから、送るよ。お母さん心配してるぞー?」
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