海の花は雪
その夜…湯舟につかりながら、自分は今日の出来事を思い出していた。

書庫の見慣れない扉にはじまり…海底でハルに会って…それから海底の王国の本…海をくぐる魔法…

乳白色の湯舟をボンヤリと眺めながら、無意識に自分は、その呪文を唱えていた。

「″ハスミ・クライス・イルギス・スイギ…″」

言い終えると…さっきのように魔法は、かからなかった。

…あれは偶然?ラッキーだっただけ?

今考えると良くかかったよな、あの魔法…ハルの力かな?

肩にお湯をかけようとして、右手が左手首にふれた。

「?!」

…何か…さわった…自分じゃない何かに…

おそるおそる、乳白色のお湯にかくれた肘から先を、湯舟の外に出してみる…


しばらく…いや、長いこと自分はそれを見つめた後、自分からなるべく見えないように、お湯の中に沈めた…

手首に見慣れない、ものがある…でも…なぜ?どうして?!

いや…今日あった事だって、信じられない事の連続だった気がする…

とりあえず…今分かる事は、明日も図書館に行かなくてはいけない理由を、自分が作り出してしまったという事だ…

「はぁーーー」

深いため息をつくと、ブクブクと音を立てて湯舟に顔を沈めた…


…しくじった…

つくづく、自分の失敗を悔やまずにはいられなかった…

一難去って、また一難…
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