海の花は雪
「…ここだけの話ですがね、先生…陛下って、セラとリナ女王、どちらに再会したいと思っているんでしょうかね?」

僕は口元を手で押さえながら、小さな声で質問してみた。

「さぁ…どちらなんでしょうね〜?」

めずらしく、先生が苦笑しながら答えた。

「…どちらにしても、過去の事ですし…高田さんは、どちらの女性とも再会を望まなかった訳ですし…」

先生はそこまで言って、グッと顔を僕の耳元に近づけると、小さな声でささやいた。

「…どちらを選んでも、フレアかロイズが傷つく事に変わりはありません…この話は、これで終わりにしましょう…」

口元だけ笑う先生の顔が、ゆっくりと離れて行った。

別の意味で、ドキドキと心臓が鳴るのを感じた…


…そっか…前世の記憶をひも解くという事は、傷つかなくて良い人が傷つくかもしれないという事なんだ…

僕は改めて、書く内容を吟味しなくてはいけない事に気づいた…

過去を暴く事で、傷つく人がいる…

う〜ん…それでも僕は書かずにはいられないから、しょうがない…

…願わくば、誰も傷つきませんように…
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