海の花は雪
「…手首に…ウロコが生えちゃったよ」

自分はそのくだりを思い出して、吹き出してしまった。

アルペジオの慌てぶりが、あまりにもおかしくて気の毒を通り越して、夜中に笑い転げてしまったほどだ…

ふと深谷君を見ると、眉間にしわを寄せて、額を左手で押さえていた。

苦痛に耐えているその表情は、年相応のものとは思えぬもので、しかも自分が目を引いたのは、左手首に巻かれた白い包帯だった。

「深谷君どうしたの、その手!もしかして昨日、ケガしちゃってたとか?!」

思わず、その白い包帯が巻かれた手首に手を伸ばした。

ビクリと深谷君は驚くと、小さな体が後ろずさった…

「あ、ごめんごめん、大丈夫?オレのせい?」

深谷君は無言で首を横にふり、小さなため息をつくと、重い口を開いて話し始めた。
< 39 / 369 >

この作品をシェア

pagetop