海辺で恋するシンデレラ
「ほら、握って無いで・・開けて。」
波瑠さんは、私にマンションの鍵を開けるように促す。
私は、言われるまま波瑠さんのマンションの部屋番号を押して
鍵を差し込むと、自動ドアが開く。
そのままエントランスの奥に入り
そして、波瑠さんの部屋の扉を開け中に入った――――
いつもは、波瑠さんに開けてもらって入っていた
彼のマンション。
なんだか、とても不思議な感じがする。
「あ、忘れてた・・・」
声を上げたのは、波瑠さんだった。
ソファに脱ぎかけられた、シャツとスーツ。
キッチンのシンクには、食べ終えた食器がそのまま水に漬け置きされたままで
散らかっている、とまではいかないけれど
まるで、波瑠さんらしくない部屋の中。
「海桜が居なくなって、気が気じゃなくて・・何も手がつけられなかったんだ。」
ワシャワシャと頭を掻くと、シャツやスーツを掻き集めていく。
「ふふっ・・・じゃぁ私、コーヒー淹れますね。」
キッチンに行き、エプロンを着て先にコーヒーメーカのスイッチを入れる。
出来上がる間に、シンクに溜った洗い物を手早く洗っていく。