海辺で恋するシンデレラ
それから、担当医という少し年配の男性が来て
いろいろ今の私の状態を説明してくれた。
ただ、少し検査をする為もうしばらく入院する、ということだった。
その日、私は名前以外何も思い出せなかった。
何故、海で溺れていたのか。
何故、1人で海に行ったのか。
私は、何処に住んでいるのか。
仕事は何をしていたのか。
家族は?友人は?恋人はいた?
いろんな「?」が浮かんできては消える。
名前以外、分からない私に、面会する人なんか1人もいなくて
ずっと1人、窓の外を見ながらボーッとしていた。
「案外、元気そうじゃないか。」
ふと、病室の扉の方から男性の声がした。
そっちの方へ、ゆっくりと首を回す。
そこには、健康的に陽に焼けた長身の男性が立っていた。
誰?・・・でも、見覚えがある?
この声、陽に焼けた肌・・・どこでだろう。
「だれ・・・?」
そういうと、男の人はクスッと笑って近づいてきた。
「覚えてない?それも、そうだよなぁ・・・俺、君を助けた恩人なんだけど?」