海辺で恋するシンデレラ

その日から、毎日のように柊司さんは顔を出してくれた。

他愛のない話をして、笑って楽しい時間が過ぎて行った――――――――――


けれど、親友だという亜紀さんはあれから一度も来てはくれなかった。

おそらくかなり、ショックを受けたんだと思う。


私が「触らないで」なんて言ったから・・・。


藤堂さんも、一度だけ来てくれた。

柊司さんが言っていた通り、私は柊司さんのカフェで働いていたようで

水曜日に決まった場所で海を眺めているところを見た事がある、そう言っていた。


柊司さんは、長髪だけど

藤堂さんは、短髪でいつも綺麗にセットしている。

柑橘系のさわやかな香りがして、清潔感のある人だ。


この人の笑顔が太陽のように感じたのも、その所為かもしれない。

藤堂さんは、今の時期ちょうど仕事が忙しくなるみたいで

なかなか来れないと、溜め息をついてきた。


本当に優しい人。


だから「退院したら、またカフェで会いましょう。」と笑顔で別れた。



数日後、私は退院した。

記憶は、全然戻らないけれど。

でもいつか、戻ると信じて―――――――


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