海辺で恋するシンデレラ
「き・お・く」
私が首を傾げたまま見ていたからか、お酒の所為なのか
言葉をわざと区切りながら紡いだ。
「あ、高校時代の事とか、幼い頃の事とか少しだけ思い出しました。」
「そっか。良かった・・・」
「あっ、父の事も少し思い出したんです。藤堂さんみたいに短髪で、笑顔が素敵で・・・海上保安官って厳しい仕事なのに、休みの日は私とよく遊んでくれて。太い腕が印象的でした。」
「・・・でした?」
言葉尻が気になったのか、首を傾げて私を見る。
「あ、10年前に救助中に事故にあって亡くなったんです。」
ごめん、と小さく頭を下げて海の方に目を向けた藤堂さん。
そんな彼に、首を振って「いいんです」とだけ呟いた。
すると大きな手が私の頭に乗せられて
「君は、強いんだね。」
いつか言ってくれた言葉を、また言ってくれた。