海辺で恋するシンデレラ

洞窟の底に目を向けると

砂がサワサワ動いて、海水が湧き出ているのがわかる。

時々、泡がボコッと現れ上へ上へとフワフワと浮き上がっていく。


その時、何かが見えたような気がした――――


『海桜、それは君の記憶だよ?』


何時の間にいたのか、私の後ろに優しい微笑みを浮かべながら

1人の男性が立っていた。



茶色の短髪。

陽に焼けた肌に、鍛えられた肉体。

そして、太い腕。

笑った時にできる、笑窪。


「おとうさんっ」


私は、思わず駆け寄り抱きついた。


会いたかった。

ずっと、会いたかった。


突然、お父さんを失って心細くて

でも、悲しい顔をしていたらお母さんを困らせちゃうから

ずっと我慢してた――――――――――

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