海辺で恋するシンデレラ

いつ頃からか「お父さん」という言葉も

お母さんの前では言わなくなった。


でも、今目の前にお父さんがいる。

すごく嬉しかった。


『甘えんぼだな、海桜は。』


お父さんは私を抱きとめ、優しく頭を撫でてくれた。




暫くして、お父さんに抱きつきつつ顔だけ上げて聞いた。


「ねぇ、お父さん。さっき言ってた事・・・この泡が私の記憶って」

『そう。あれは海桜の記憶。泡、1つ1つが今まで経験してきた事。』


お父さんは、泡が上がって行った場所を見つめるように上を見る。




『海桜?お父さんがもうこの世の人では無い事は、覚えているね?』


一瞬悲しそうな顔をして私を見つめる瞳。


「おとうさん?」


何故だか、不安になって呼んでみる。


< 59 / 218 >

この作品をシェア

pagetop