おれんじ・ちょこれーと


―――プチン、



何かが切れる音がして徐に首にしていたネックレスを引きちぎった。


そして、目の前にいるあのひとに投げつける。


「痛、」


彼は頬に当たったそれを確認してからこちらを見て驚いた顔をしている。



うん、馬鹿やないの―――



クルリと真逆に体の向きを変えてそのまま走る。勿論、猛ダッシュで。


「っ!おいっ………!」


静止を呼ぶ声が聞こえるけど知らない。
先に裏切ったんはアンタやもん―――



「おいっ!まてっ………!」


待つわけないやんか、そんなん。
そこまで馬鹿ちゃうわ。


心の中で罵倒して、更にスピードをあげる。

絶対に、絶対に、掴まらへんもん。
もう、二度と―――


足音が小さくなってきて、路地の角を曲がったところで足を止める。


「………っはぁ、っは、………」


肩で大きく息をしながらちろりと後ろを振り返る。うん、誰もおらん。
ふぅ、と安堵の息を吐いたとたん流れ出る涙。


小さな、小さな、嗚咽を噛み締めて涙を強引に拭う。



「………っゆう、の馬鹿。だい、きらい……!」

「―――誰が馬鹿だって?」


聞き慣れた、耳になじむ声がして勢い良く振り返る。
そこには、顔を歪めてうちなんかよりも苦しそうに呼吸をしている悠がいた。


咄嗟に逃げようとしたら腕を掴まれて、視線をあわせられる。


何やねん、怒りたいのはこっちや。
そんな怒った瞳してもしらんやん。



言いたいこと、怒鳴りたいことはあるはずやのにぐちゃぐちゃになって何も言えなくなってしまう。

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