おれんじ・ちょこれーと


ポタリ、ポタリ、
涙が溢れて地面に落ちる。



悠が、好きだと言ってくれたまあるいオレンジ色の雰囲気は今、どうなっているのだろうか。
くすんでギスギスしているに違いない。





でも、でも、


「もう、嫌や。」


疲れたんや。彼女でいることに。




悪意ある視線や言葉
毎日投げかけられる疑問
偽りの噂に振り回される日々


ホントは、ずっと穏やかに笑っていたかった――



でも、もうむりやね。


「……悠、…………別れよ?」

「っ!」


あふれ出る涙はいつの間にか止まっていた。
それよりも、諦めに似た感情が胸を締め付ける。


驚いた表情から一変して哀しげに歪められた顔を見ながら笑ってやった。
すると、もっと驚いた顔でウチを見た。


「じゃあ、さよなら。」


乱れた髪を少し整えてからウチがいつも使ってる関西弁やなく悠が話すような関東弁で別れを告げた。



そして、そのまま悠に背を向けて歩いた。
だんだん、はやく。しまいには走っていたのだけれど。
暫くしてから後ろを振り返ると当然の如く悠は追いかけてこない。
そのことが何故か哀しくて切なくて、またせきが切れたように涙が溢れては零れ落ちる。
歯列から漏れる嗚咽も我慢して、走った。


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