デキちゃってない結婚
 酒井が帰ると妙に夏歩のテンションが高かった。

「良かったわね」

 真理子が拗ねた感じで夏歩に言った。

「訊いてたの、運命よ、きっと運命よ」

 夏歩が運命何て口にするようなタイプではなかったので真理子は正直、気持ち悪いと思った。

「真理子あんたも恋愛頑張りなさいよ」

 気持ち悪くなったと思ったら今度は上から目線で迫ってきた。

「頑張れって言われも、連絡先わかんないし」

 真理子は世界一不幸な女になった気分だった。相変わらず拗ねた顔のまま編み物をしていた。

「佳奈ちゃんに訊けば、佳奈ちゃんなら知ってんじゃないの」

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