デキちゃってない結婚

「春菜ちゃんお願いね」

　そう真理子に頼まれた春菜は溜め息をついてお客さんの方を見ると、ニヤッと笑った。

「真理子さんお願いします」

　台車に積んであるお菓子をお店の前に並べていた真理子は春菜の言葉に忙しそうなフリをして呟いた。

「ごめぇん今無理」

　しかし春菜は真理子の方へ近付いて満面の笑みを浮かべた。

「真理子さんご指名みたいですよ」

「はぁ？」

　真理子は顔を上げてお客さんの方を見るとお客さんにわからないように嫌な顔をした。何故ならそのお客さんがラーメン屋の酒井だったからだ。