デキちゃってない結婚
 そして美月は自分が昔、手編みのセーターに憧れを持っていたことを思い出した。

「そういうことか」

 そう小さく呟いた美月は、何かに気が付いたように何度か頷いてこう言った。

「じゅんちゃんも、そのセーター似合ってるよ」

 二人は顔を合わせニコッと笑って待合室に歩き出した。

美月はコートを脱いで、待合室で座っていた小竹に渡した。

そんな中診察室のドアが開いた。

中から笑顔の無い真理子が今にも涙が零れそうな真っ赤な顔で現れた。

夏歩が急いで駆け寄ろうとしたが、それより早く美月が駆け寄った。

「どうだった?」

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