デキちゃってない結婚
 そんな事を言われているとも知らず真理子はニコニコと二人の様子を眺めていた。

「二人とも何話してるの?」

 夏歩と春菜が慌てて振り向くと、店頭に詰まれためんたい大福ととんこつ大福の間から真理子の満面の笑みが二人に注がれた。

二人は仰け反り目を合わせると苦笑いした。

「何か怖くないですか、真理子さん、妙に今日オシャレですし」

「そっ、そうね、美容室にも行ったみたいね」

 また真理子に訊こえないように呟いた夏歩と春菜はお客さんが来たことに気が付いたみたいで、ナイスタイミングと急いでお客さんの方に近づいた。

「いらっしゃいませ」

 お客さんは背も高く黒のコートをまとったいかにもビジネスウーマンといった格好の女性。

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