デキちゃってない結婚
夏歩からみれば同じ三十歳でも童顔の真理子がやった方がいいと、無理やりでも真理子にやってもらおうと思っていたのだ。

「ダンスって、どのダンス?」

「どのダンスってイベントでやるやつよ、毎年やってるでしょ、駅前で」

 真理子は口を大きく開けて仰け反った。何故なら真理子はダンスと聞いて完全にスパイスキッドのダンスだと思ったからだ。

夏歩には何でも話すのだが、家で毎日のように見ているスパイスキッドのライブDVDを見ているうちに、振り付けを全て覚えてしまったことは、恥ずかしくて言わないでいたのだ。

「真理子、何か違うダンスでも覚えたの?」

 夏歩の言葉に心の中で頷き、何とか誤魔化さなきゃと額に汗を垂らした。

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