デキちゃってない結婚
「美味い」

 思わず言った一言に真理子が満面の笑みで返した。その表情に百戦錬磨の美月だが思わず照れてしまった。

 美月は恥ずかしかったのか真理子からまた目を反らした。すると美月は何かを発見した。

「編み物とかやるんですね」

「はい、得意なことがそれぐらいしか無くて」

 その言葉を訊いて美月はそれだけじゃないと思った。部屋も綺麗、おそらく毎日掃除しているのだろう。それに花も育てている。そしておそらくパンの上に乗ったグラタンはレトルトではない、昨日飲み会に行く前に作っておいたのだろう、だからといって次の日誰かが泊まりに来るとは限らない。きっとこの人は毎日こんなキチンとした生活をしているんだろう。と美月は思い、真理子の株はドンドン上がっていった。

「そうだ何か編み物作りましょうか?完成したら送りますよ」

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