純情彼氏

先輩の顔が綻んだ
さっきから表情がコロコロと変わっていく
きっと思い出しながら話してくれてるんだろうな


「……それでも運は俺の見方にはなってくれなかったけどな」

「……どういう事ですか?」

「お前と付き合った直後の事だよ

俺さ言ってなかったけど父子家庭だったんだよ
でも親父とは折り合いの良くなくてさ
急に何日か前に出て行ったきり帰ってこなくてよ
気にはしてなかったんだけどある日借金取りが家に来てようやく分かったんだ」

先輩はそこで言葉を切ってコーヒーカップを見つめた
コーヒーカップの中身は波紋を打ってユラユラと揺れる

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