純情彼氏

「それよりもだっ!!ちょっと匿ってくれっ!!しつこいんだっ!」

「いや、何の話よっ!?」

「もういいからっ!」

バタバタと奥の本棚の死角に進んでいく橘を呆然として見ているとドアが開いた。


「…いない。……あら、渡辺さん。今こちらに圭来なかった?」

そう私に尋ねてきたのは同じクラスのマドンナと呼ばれる清水 由香さん。
立ち姿だけでも気品さが漂っている。

「………残念ながら来てないですよ。そもそも橘君、本を読まないじゃないですか」

「……えぇ、それもそうね」

そう言って清水さんは一旦、室内を見渡して図書室から出て行った。


「………いい加減出てきたら。臆病な橘君」

「……お前さ、俺に対する言い方きつすぎない?」

「そう?」
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