男の中の男




俺のブーツの足音が、緊張からかやたらに大きく聞こえるような気がした。




しかし、俺は、多少の勇気を持ってその空間に入る。




俺は、実は気が弱いのだが男ならこうあるべきと常に自分の頭の中で考える癖がある。




昔観た映画の中で高倉健が黙ってカウンターで日本酒を飲んでいる映像が浮かんで来る。




そこでは、男達が真剣な表情をしている。




まるで、世界戦の時のボクサーが入場して来た時の表情だ。



男達の年齢層や服装は、バラバラだ。




俺のようなカジュアルな格好をした中年も居れば、スーツ姿の若いサラリーマンらしき男も居る。




チャラい感じの若者も居れば日焼けした作業着姿の六十代に見える男も居る。




張りつめた緊張感が、漂っている。




大抵皆一人だ。




たまに、友達と来てる奴はやたらに口数が多くなる。




俺は、そういう姿を見ると男じゃないなと思う。




しかし、何を間違えたか彼女と来る男は、周りから白い目で見られてるのにも気付かずにはしゃぐ。



そういう男を見ると俺は、頭の中でこのオ○マ野郎と思う。



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