お姫様は王子様を演じてる
「ほら…真琴、帰るよー」
名前を呼ばれて顔を上げると、悠斗が私を手招きしてる。
気がつけば、みんないなくなっていて部屋の中は私達二人だけだった。
―――悠斗、待っててくれたんだ。
何か嬉しい…
最近仲間外れが多かったから、てっきり今日も置いてきぼりにされるかと思ってた。
「あのさ…耳ちゃんとついてんの?
僕が待っててあげてんだから飼い犬ばりにダッシュで来なよ」
「えっ?はい!今行きます」
ジロリと私を睨む悠斗の機嫌をこれ以上損ねる前に私は側に駆け寄った。
「ほんとトロイよね…」
「すいません…」
「まぁ、けどさ…」
「はい」
「あのさ…」
「はい」
「えっと…」
「はい」
「今日は…さ…ありがと」
下を俯きながらぶっきらぼうに言う悠斗の頬は少し赤くなっていて…
むぎゅっと抱き着きたくなるくらい愛らしかった。
私が何の役に立ったのかイマイチわからないけれど、お礼を言われるのはすごく嬉しい。