お姫様は王子様を演じてる
「珍しいな…
澪がこの時間に家にいるなんて。
だが俺にぬかりはない!!朝食はすぐに用意しよう」
そう言ってキッチン入って行く兵藤一樹を見て、澪と二人きりになりたくない私はそっと席を立った。
「……ごちそうさま」
「……待てよ」
低い澪の声が私を呼び止める。
私は振り返らずにそのままリビングを出ようとした。
あんな奴の言うことを聞く義理はないし、本能が逃げろと訴えかけてる。
「……チッ」
舌打ちが聞こえて乱暴に席を立つ音が後ろから聞こえた。
ヤバい…ヤバい…
逃げなくちゃ…
走りだそうとした私の腕を痛いくらい強く掴む手。
「おい、こっち向けよ…」
渋々、声のほうに顔を向けると不機嫌そうに眉を潜めた澪が見えた。