[短]恋ココロ
中章
「ちょっと、桜。桜。」
数学の怖い先生が黒板をカツカツとたたく中、私を呼ぶ声がした。
この声の持ち主は一人だけ。
江崎快斗。
夏帆の双子の弟だ。
そして私の隣の席。
「なによ、山田先生怖いんだから静かにしててよ。」
「っま、そう言うなって。ここみて。」
ん?
快斗が指したノートを見ると山田先生そっくりな似顔絵が書いてあった。
「ぷっ、似てる。あんた、絵だけは上手だね。」
「うるせーよ。あ、このあと。ちょっと話しあるんだけど屋上着いてきてくんねえ?」
話?
今も十分してると思うけどな。
まあいいや。
「分かった。」
返事は軽くそっけなく、眠たそうに。