甘いケーキは恋の罠
「ねぇ……いつもバスの中で僕のこと見ていますよね?」
――ドキッ――
驚いた。まさか気付いていたとは思わず、毎日バスに乗る度に彼を見ていた。
「あっ、のっ………。」
頬を包んでいた右手が私の顔の輪郭をなぞるように滑る。
その行為に、見つめていたことが知られていたことに、心拍数が上がる。
唇に彼の指先が触れ、ゆっくりと撫でられる。
心臓が異様なまでに脈打つ。
私の唇に触れていた指がそっと離れ、彼の唇へと運ばれる。
その1つ1つの動作に底の無い穴に落ちてゆくように意識を持っていかれる。
そのまま指が彼の唇へと付けられ、舐めとられる。
「チョコレートがついていましたよ。」
その魅惑的な表情に、甘美な声に背筋にぞわっとした何かが走った。