甘いケーキは恋の罠
自分の手の平を見ると袋に入ったハート型のチョコレートが置かれていた。
「えっ……?」
訳が分からず手の平に置かれていたチョコレートを見る。
「チョコレートは専門外ですが、ケーキを作った時に一緒に作ったので、差し上げます。」
微笑みながらそう言った匠さんの顔から目がそらせない。
――ドキン、ドキン――
心拍数が上がる。
「あっ…あのっ……よろしければ家でお茶でも……。」
匠さんの目を見つめながら言うと彼は目を細めた。
「しりませんよ…?」
不敵な笑みをこぼした匠さんの小さなその声は、俯いてしまった私に全く届いていなかった。