甘いケーキは恋の罠
――ドクッ――
心臓があり得ないほどの音を立てる。
何か言葉を発さないとと、思っていても口が開かない。
それはまるで、匠さんが呪文で魔法をかけたかのように。
「ねぇ……僕以外にここに男の人をあげちゃだめだよ…?」
私の耳元から顔を離して、妖艶に微笑む彼の表情は私の瞳を捕えて離さない。
「返事は……?」
彼のその一言で今まで指一本動かなかった体が嘘のように首を縦に振っていた。
その後のことは全く頭に入っていなくて、気付いたら朝を迎えていた。
カーテンから漏れる光に目を細めると携帯電話の音が鳴り着信を知らせた。