捕まえた
第一話『鬼ごっこ』

「くそっ! どこに逃げやがった!!」

「同じ色のハチマキの人を捕まえるなんて……

不可能に近いわ……」

「同感だね。何色あるんだろう……」


 全く違う色のハチマキを持った2年生の生徒が文句を言いながら

階段の踊り場に座りこんで話していた。

 私がそこを通りかかると、2年生は驚いた顔をして動きを止めた。

「あら? こんな所で会えるなんて……今日はついているわ」

 にやりと口角を上げて笑うと、2年生の生徒達は私から逃げる準備をした。



「来るな!! 化け物!!」

「アタシじゃなくて健斗(けんと)を捕まえてよ!!」

「何で俺なんだよ!! って、こっちくんな!!」

「まぁまぁ、そんなに慌ててると目を付けられて捕まるよ? 

ここは二手に分かれて、後で合流しよう。健闘を祈るよ」

「あっ! イク、待って!!」

 2年生の女子生徒はイクと呼ばれた男に付いて行った。そして、健斗は未だに

私に追いかけられている。しかし、息を乱すことなく体育館に続く渡り廊下を

走り続ける。私もそれに付いて行く。


 そう……この鬼ごっこのルールは同じ色のハチマキを持った人以外でも

ターゲットにしたら捕まえていいルール。


 まぁ、ルールは私の気分しだいで追加されたり削除されたりするけれど。


 ここの学園内では私が絶対のルール。


「何で俺に付いてくるんだよ!! 同じ色のハチマキじゃねえだろ!!」

「あら、大きな声を出すと罠が発動しちゃうわよ?」

「はぁ!? ……っ!? 何じゃこりゃああ!!」

「だから言ったでしょう? 罠が発動しちゃうって……」

「そうじゃない! 俺は何でこんな格好になってやがるんだ」

 健斗は微妙に頬を赤らめながら、私に問いかけてくる。

 愚問だ。

 そんな事決まっている。

 ここでは私がルール。そして、私の自由。

 私の趣味も組み込まれている。

「決まっているじゃない? 私の趣味なの。縛りプレー」

「……何さらっとドヤ顔で言ってやがるんだ。お前一応この学園の

生徒まとめてる会長様だろうが……」

「じゃあ、貴方が私を駄目にしないように管理してくれる?」

「バカ言ってんじゃねえ。俺は、そんな柄じゃねえ他を当たれ」

「例えば?」

「例えば……イクとかな」

 悔しそうな顔をして、健斗は俯いた。

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