With you…
体育がマラソンで最悪だった。
佳花のお弁当に入ってたアスパラの肉巻きが美味しかった。
数学Iの授業、宿題やって無くてあてられて焦った。
今日好きな漫画の新刊なのにお金がない。
期間限定チーズフォンデュ味のチョコが意外にいける。

片っ端から話していく。
にこにこ微笑みながら、じっくりと広尾は私の話を聞いている。
たまに、「そっか」「へえ」「いいな」などと、小さな相づちが入る。
いい加減話すことが無くなると、私と広尾の間に沈黙が流れる。
なんで今日は私ここにきたんだっけ、そう考えながらぼんやりとする。
広尾も私と同じくぼんやりと外を見つめる。
どんよりとしていたはずの空は、気がつけば雲を払っていて、夕焼けに染まった朱色の空が見える。

「何、見てるの?」

あまりにも広尾が一点を窓の外に見つめているので、私はそう問いかける。
広尾は視線を外さずに、ぽつりと呟く。

「―――空が、青かったから」

赤く染まった空は、どんどん紫を帯びていく。
私は、広尾が何を言っているのか分からずに、広尾のベッドに椅子を近づける。
そして、白い布の上に置かれている広尾の同化しそうな白い手を握る。
あまりにも冷たい。
不意を突かれた広尾は驚いて、こちらを振り返る。
その大きなつぶらな瞳には、涙がたまっていた。
私は広尾の左手をぎゅっと握る。
私の体温が、広尾の手に移るように。

「私がいるよ、ずっと」

広尾の白い頬に涙が伝った。
私は広尾の目を見つめて、また笑った。
上手く笑えたかどうかは分からなかった。
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