一月の花*君の体温
九月、その冷たさ
1.花恋
それは所謂、腐れ縁―…そういうものなのかなと思っていた。
僕にとって彼女はかけがえのない人で、いつの間にか一緒に居るのが当たり前になっていた。
友人には、付き合っているの?なんてはやし立てられることももう慣れっこで。
このぬるま湯の様な…暖かくて居心地のいい関係を今更壊すのもどこか憚られて。
きっと、そんなもどかしさを、彼女もどこかで感じているんだろうなんて思ったりもして。
「お待たせー」
もう大分風も冷たくなった、札幌。
相変わらず昼間は少し汗ばむこともあるけれど、それでも内地と比べればもう相当涼しいんだろう。
日が短くなってきたな、なんて目を細めながら、僕は声の方を振り向いた。
イマドキの女子高生にしては、綺麗な黒髪を腰の辺りで切りそろえていて、色白の彼女は、名前を成瀬花恋(ナルセ カレン)といった。
彼女とは保育園の頃からの幼馴染。
エスカレーター式の小学校にお互い入ったものだから、高校生になった今もこうして付き合いのある、数少ない僕の女友達だった。
「遅いよー」
僕が自分でもわかるほど間延びした声で言うと、カレンはごめんねーといって笑った。
どうしても今日発売のCDが買いたいから、と懇願されて、僕はこの薄暗いそらの下待たされていたわけだけど。
「それよりほら、ケンちゃん行こう。地下鉄混む時間だし」
その混む時間までつき合わせたのは誰なのかと、半ば呆れてしまう。
もちろん、もうそんなことも慣れっこなわけだけど。
「ケンちゃんって言うのやめろよ…僕もう高校生だよ」
「ケンが僕っていうのやめたらねー」
いたずらっぽく笑うカレンは可愛い。
カレンは僕をケンちゃんと呼ぶけど、僕の名前は健一郎…まぁ長いし、
カレンはずっとケンちゃんって呼んでいるわけだから慣れてしまっているんだろうけど。
帰宅ラッシュにもみくちゃにされながら、家から最寄の地下鉄を降りると、もうすっかり空は暗かった。
さすがに夕方ともなるとひんやりとした風が指先を冷たくしていく。
「寒いねー」
カレンは何が楽しいのか、一人ではしゃいでいる。
僕はどちらかというと寒いのは苦手だから、カレンが楽しそうに歩くのを横目に、小さく身体を丸めながら歩く。
「カレンは元気だなぁ」
「あら、私が元気じゃ悪いの?」
「べつにー」
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