一月の花*君の体温
2.ウラハラ
カレンと別れて一週間。
僕はそれまで毎日通っていたお見舞いも、行かなくなっていた。
足が向かなかったのもある。
ただそれ以上に、今カレンに逢えば、カレンが敢えて僕を突き放した意味がなくなる気がして。
本当は…ただ、自暴自棄になっていただけなのかもしれない。
たかだが十数年の人生だけど、ずっと一緒だった相手に突き放されて、気持ちのやり場をなくしていた。
それも、カレンが望んだことなんだから、と自分に言い聞かせるような毎日だった。
僕の態度を見て、クラスメートは色々とうわさをしているようだった。
僕はもう、そんなことすらどうでもよかった。
ただ、毎日カレンのことを思い出しては、それを心の隅に追いやることの繰り返し。
「カレンちゃんと、別れたんだって?」
僕の数少ない友人―…テツが声を掛けてきたのは、放課後だった。
「お前には関係ないだろ」
改めて人から言われると、やっぱりショックだった。
嫌いになったとか、ケンカ別れしたとか。
そういうものじゃないだけに、余計だと思う。
「…まぁ、お前達のことに口出す気はないけどさ」
テツはそういいながら頭をかくと、少し考えてもう一度口を開いた。
「気分転換にカラオケでもどーよ」
テツはテツなりに、気を使ってくれているんだとわかった。
いつもの僕なら、断っていたと思う。
でも今日は、テツの好意に甘えておくことにした。
学校から歩いて数分のところにあるカラオケボックスは、夕方ということもあってか混んでいた。
それでも予約かなにかしてあったのか、僕たちはすんなりと部屋に通された。
「後で何人か来るけど」
テツは誘っておきながら僕のことなどお構い無しで、好きな曲を適当に歌っている。
僕としてもそのほうが気が楽だったから、ぼんやりとしながら思考の外側で聞こえてくるテツの歌をBGMにしていた。
「お待たせー」
どれくらい時間がたったかわからないけど、そのうち何人かの友人や、顔も知らない同世代の男女が入ってきた。
こんなに大人数になるとは。
「おせーよ」
テツは僕と違って友達が多いらしい。
気さくに何人かと会話をしているところを見ると、みんなテツの友達か。
「あ、初めましてー。テツのお友達?」
その中の一人が、僕に声を掛けてきた。
髪は明るい茶色に、ふんわりとパーマを当てていて、多分可愛い子。
カレンとはまた違った感じの美少女だった。
「どうも」
僕はぼんやりとそんな返事を返した。
「あたし、セリナ。セリでいいよー」
セリちゃんは、僕達とは違う高校に通っているそうだった。
あまり、僕のまわりにはいないタイプのような気がした。
華やかで、明るくて。
「ケンくん、でいいのかな?」