一月の花*君の体温
カレンが寂しそうに呟いた。
それでも、思いつめていたような表情は消えて。
僕はカレンの頭を優しく撫でた。

「電話するよ」

「うん」

「空港に見送りくらいは行っていいんでしょ?」

「来てくれるの…?」

カレンが嬉しそうにしていたから、僕も嬉しかった。
カレンの病気も、きっとよくなる。
僕は何度もそう自分に言い聞かせた。

「あ…もうこんな時間か…」

「本当だ…もうすぐ消灯時間だから、そろそろ帰りなよ」

名残惜しかったけど、僕はカレンに手を振って病室から出た。
外ではまだセリちゃんが待ってくれていた。

「おかえり」

「ただいま」

「その様子だと、仲直りできたのかな」

「…ごめん」

僕が謝ると、セリちゃんは腰に手をあてて頬を膨らませた。

「あのねぇ…確かに私は今失恋したわ…。だけどね、それもしょうがないかなって思うから…しょうがないから、二人を応援してあげるっ」

にっこりと笑うセリちゃんは本当に可愛い。
もしカレンより先にセリちゃんに会っていたら…また結末も違ったのかもしれない。
そんなことを考えたってしょうがないけど、でも僕はセリちゃんのためにも、もう迷っちゃいけない。

「あ、そうだ。今度本当にカレンさんのこと紹介してよね」

「なんでそんなにカレンに会いたいの?」

「恋敵の顔は知っておかないと…って、冗談よ」

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