恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
駅までの帰り道。
中野と並んで歩く。
ちら、と隣の彼を見上げる。
短くツンツンした髪。
引き締まって鍛えられた長身の身体。
長めの髪をサラサラさせて女の子に騒がれる司とは全く違うタイプ。
「……ねえ。……聞かないの」
「は。何を」
「私が泣いていた訳。」
「………。
………チビったんだろ」
「……違うし!あり得ない……っ」
「……冗談だよ。
……別に、知らなくていい。
人にはそれぞれ考えてる事や悩みくらいあるもんだ」
…………。
ぶっきらぼうだけど……優しい。
――「菜緒……。力也」
駅の側で突然、声をかけられ二人で驚きながら振り返った。
「司……」
「あれ。お前、どしたの。
こんな時間に。
瑞穂とデートだったのか」
中野が何気なく言った一言に心がきしむ。
忘れかけていた先ほどの切ない気持ちがドッと再び押し寄せてきた。