恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


………本当はもう分かってる。
もどかしい、だとか、資格、だとか。
恋には条件なんて、ない。

ただ、好きだから。
それだけで。

ここまで追い詰められてもまだなお、俺は醜い言い訳ばかりを考えて、再び君から逃げ出そうとしている。

……ゆっくりと初めて振り返った。

「………?」

あゆがいたであろう場所に、紙袋。

そっと近付き中を覗き込む。

「…………」

………そこには。
先日、俺を苛立たせた、毛糸の塊があった。






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