恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


「……?」

中身を取り出して広げてみる。

………。

それは、暖かそうなセーターだった。


次の瞬間に、俺は走っていた。
毛糸の塊を抱えて、すごいスピードで。

あゆ。ごめん。
言いたい事を、半分も伝えないままに君を責めた。
資格なんて、なくてもいい。
君が許してくれなくても、ただ一言、言わせてくれたらそれでいい。


逃げても解決するはずがない。
他の誰かに代われるはずもない。

新しい世界でやり直そうだなんて、思い上がりもいいとこだ。

だって、まだ、この気持ちが終わっていないのだから。




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