恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


膝に両手をついて、息を乱したまま、地面を見る。

言えた。
もう、これでいい。
あゆにこんな自分を見せてしまった。
幻滅されても仕方ない。
だけど何故か、後悔はない。
清々しく思えた。


「……じゃ。……行くわ。
これ………ありがとな」

俺はそのまま向きを変えて歩き出した。
もう、いつかは前に進める。今すぐにはとても無理だけど。
いつか、終われる。
そんな気がした。


「どこに……行くの」

……は。

ニ、三歩歩いたところであゆの声がした。

「……あの子のところ?」

…………。あの子?

振り返りながら聞き返す。

「あの子って………」

後ろを向いた瞬間に、あゆが飛び付いてきた。

「わ!!!」

驚いてよろめき、そのまま二人でひっくり返った。

「うわ!!!」






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