恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「違うよ。今日はアイツ、用事があるって」
「あ、そう」
中野と話しながらも司は私を見ている。
「………」
やめて。
見ないでよ。
泣き晴らした赤い目を。
そんな、刺すような視線で私を見ないで。
見透かされてしまう。
これまで必死で押し殺してきた気持ちを。
あんたでいっぱいの頭の中を。
私は俯きじっとしながら目をギュッと閉じた。
「……で?何でお前らが一緒に帰ってる訳?
もしかしたら………お前らって…」
司の言葉に顔を上げて彼を見た。
「は。何言ってんだ。
偶然教室で……さっき……」
中野はその先を言おうとして口をつぐんだ。
…あ、そうか。私が泣いていた事を話しにくいんだ。
……やっぱ、優しい。