恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「…あなた、何を言いたいの…?」
俺は空を見上げながら立ち上がった。
「…現時点では、何も知らない。君も俺も。相手のことは。
だけどあともう少し、話していたら始まるかも知れない。
君が恐れている、何かが、ね」
「……は。あり得ないわ…」
彼女も立ち上がり俺の隣に立った。
「あなたみたいな自意識過剰オトコ、趣味じゃないのよ。
………私みたいだもの」
俺達は顔を見合わせた。
どちらからともなく笑い合う。
「俺もだよ。君みたいな子は大嫌い」
本気になったら負けだから、これまで適当にやってきた。
絶対に好きにならない子達とうわべだけで遊んできたんだ。
「あーあ…、面倒な子と話しちゃったなー…」
きっと。知りたくなる。もっと、見ていたくなる。
「あなたに言われたくない」
始まってしまったら、進むしかないから。
嫌いだよ、君みたいな目をした女の子は。