恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


「…あなた、何を言いたいの…?」

俺は空を見上げながら立ち上がった。

「…現時点では、何も知らない。君も俺も。相手のことは。
だけどあともう少し、話していたら始まるかも知れない。

君が恐れている、何かが、ね」


「……は。あり得ないわ…」

彼女も立ち上がり俺の隣に立った。


「あなたみたいな自意識過剰オトコ、趣味じゃないのよ。
………私みたいだもの」


俺達は顔を見合わせた。

どちらからともなく笑い合う。

「俺もだよ。君みたいな子は大嫌い」


本気になったら負けだから、これまで適当にやってきた。
絶対に好きにならない子達とうわべだけで遊んできたんだ。

「あーあ…、面倒な子と話しちゃったなー…」


きっと。知りたくなる。もっと、見ていたくなる。

「あなたに言われたくない」

始まってしまったら、進むしかないから。


嫌いだよ、君みたいな目をした女の子は。



< 122 / 130 >

この作品をシェア

pagetop