恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
そんなに警戒しなくても誰にも言わないのに。
と、いうかそれ以前に私には気軽に話せる友達なんてものはいないのだから。
毎日一人で過ごし、一人の考えだけで動いている。その方が楽だもの。
人と関わり合っても面倒なだけ。そう思う私自身が一番面倒でつまらない人間なのだろう。
右京くんはどうして私を誘うのかしら。本気で自分に惚れさせる気なのかしら。
………彼が、分からない。
「真〜梨恵、行くぞ」
「あ、うん」
地元のツレに私を会わせてどうしたいのよ。
意味不明。
歩き出した右京くんの後を、鞄を抱き締めてうつむき付いていく。
そんな私達に冷たい視線を向ける女子の大群。
彼はモテるから、これも想定の範囲内。だけど勘違いしないでよ。誘うのはいつも、右京くんの方なのよ。