恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


私は彼を好きにはならない。
右京くんは何かが始まるだなんておどけていたけど、それはないわ。
ただ、彼に興味はある。確かにモテる理由は分かる。イケメンで気遣いを忘れない。そんな男の子に冗談でも口説かれたなら誰しも信じたくなる。

右京くんはきっと、本気じゃないだろうけど女の子は皆、のぼせ上がってしまうわ。


「どーしたぁ?腹でもいてぇの?トイレ行っとく?」

深刻な顔で色々考える私に彼が軽口をたたく。


「ばっ……!違うわよっ。あなたってどうしてそうなの?」

過剰反応した私を彼は嬉しそうにニヤニヤしながら見下ろす。

「はははっ。ムキになってる。美人が台無しだよ?あ、着いたら眼鏡、外してね」

「美人?からかわないでよ。…しかも何で外さなくちゃいけないのよ。何も見えなくなるじゃない」



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