恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「…何よ、急に真面目な顔で…。冗談……」
右京くんの顔から笑みが消えた。
「俺の側にいたらいい。
一人で過ごすよりは、楽しいよ。
……と、いうか、むしろめちゃめちゃ幸せ感じるほどに可愛がるけどね」
ニヤリと魅惑的に微笑む彼にタジタジになる。
「……嘘ばっかり…っ」
信じられない。
信じちゃダメ。
好きになったら負けなの。
彼は、危険すぎる。
「なあ……真梨恵…、俺にしろって」
彼の顔が徐々に近付いてくる。
その唇が重なった瞬間に、きっと何かが変わっているのだろう。
その時はもう、降参せざるを得ない。
…………これ以上、私を誘惑しないで。
意地を張れなくなる。
あなたが好きだと、知られてしまう。
次の瞬間、彼の柔らかな唇の心地よさに私はそっと目を閉じた――。