恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「なあ、司。お前のその面白い物語はいつまで続くわけ?
まさか俺と一ノ瀬が結婚するまでのシナリオを全て語るつもりか?」
中野が面白がって冗談めかして言う。
「……まさか。これで終わりだよ。
………俺の、……気持ちもな」
司がチラッと私を見た。
………!
その目が、……色を失くしていた。
感じたのは……強い、拒絶。
きっと、もう、戻れない。
笑い合って、ふざけた虹色の日々。
片想いでも、充分幸せだった。
「…司…」
早く誤解を解けばいい。
今すぐに私が好きなのは司だと、気持ちを受け入れたらいい。
「……」
駄目よ。
……これでいい。
司に苦しんでほしくない。
後悔してほしくない。
きっと佐山さんと私の間で苦しむ。
司にはいつもみたいに笑っていてほしい。