恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》


「……じゃ、俺…行くわ。
バイ」

司がクルッと背を向けて歩いて行く。

「………う……」

私はその背中を見つめて泣いていた。

「……あのさぁ…、余計なお世話かも、だけど…」

中野がポツリと話し出す。

「……自分の気持ちは誤魔化せないぜ。
……人は騙せてもな」

……うん。そうだね。

こんなに痛いなんて。

こんなに自分が嫌になった事なんて。

今までになかった。

「いくらお前が……佐山に遠慮しても…、あの二人も終わるときは一ノ瀬がいてもいなくても終わる。

司が自分の気持ちに気付いた時点で、…先はもうねぇんじゃねぇの」

「………」

「ま、俺もさ、あいつとはこれからも仲良くしたいからさぁ。
誤解は早く解いてほしいかなー、なんて」


………だよね。


「……ごめん」

「だからぁ、お前はいちいち謝んなっての!
お前みたいな面倒臭い女、司みたいなテキトーなヤツしか相手出来ねぇわ、マジで」





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