恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
中野はフウッと軽くため息をついてから、ニッと私を見て笑った。
「はよ、行け」
泣いている私の背中をトンッと押す。
「……うん。ごめんね…」
「謝るな、アホ」
「うん」
――次の瞬間に駆け出した。
もう、後の事を考える余裕すらなかった。
迷ったり、泣いたり、笑ったり、妬いたり、怒ったり。
伝えたい。
全ての気持ちはあんたに向いていると。
司が、好きで、堪らない。
奪ってでも私のものにしたい。
誰にも遠慮なんて、もうしない。
やっと、何かが吹っ切れたように、そう思えた。