恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》



「勇樹くんの誕生日!
来週じゃん!」

うっかりしていた。
そうよ。
その日ばかりは流石に彼女のものだよね?!
勇樹くんと二人だけでささやかにお祝いするの。

「…ああ、何だ、そうなの…」

「そうなの、じゃないわよ!
一大イベントだよ!
勇樹くんに伝えなくちゃ」

私は興奮して携帯をポケットから取り出した。

電話をダイヤルして彼の応答を待つ。

「頑張って」

上杉くんは気のないそぶりでそう言って、再び本に手をかけた。


プルルルル、プルルルル。

勇樹くん、早く出て。
私、頑張って勇樹くんをきっと喜ばせるから。
彼はきっと私の計画に感動して私と過ごすその日を楽しみにしてくれる。


………『はい、千秋?どしたの』

「勇樹くん!あのね、えっと、」






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