恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
『わりぃな。じゃ、切るよ。
またな』
プッ。
呆気なく切れた電話を耳に当てたまま、呆然とする。
………何なの。
私は………何なの。
勇樹くんにとって……いてもいなくても、変わらない存在なの?
「岩崎さん?どうしたの。
桜井くんは何だって?」
上杉くんはぼんやりしたままの私に近付いてきて顔を覗き込んで訊いてきた。
「…上杉くん。あなたの言う通りだよ……。
私、平気なふりして無理してるの。
本当は…勇樹くんに冷たくされる度に、不満を感じてるの」
「……え。」
「……潮時かも。
自分を大切にしてくれる人の方が、いいに決まってるよね」