恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
上杉くんは、ポケットからそっとハンカチを取り出し、私にすっと渡した。
あ。
私はそれを無言で受け取ると、目に当てて溢れる雫を拭った。
大好きなの。
胸がキュッと締め付けられるほどに。
一緒にいられるだけで幸せだった。
物足りないだなんて思うはずはなかった。
人は、願いが一つ叶うと、また更にもう一つ欲しくなる。
とても欲張りで限りがないんだね。
あなたが千秋にこれからも何も与えるつもりがないのなら、欲張りな私はきっと耐えられないから。
我が儘は言わない、だなんて格好つけてたけど、もう無理。
ごめんね、勇樹くん。