恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》
「桜井くん、まだあの子と続いてたの?
今回は長いね〜」
「でも一緒にいるとこあんまり見ないね」
「ねえ、別れたら次は私と付き合ってよ」
「あ、睦美、どさくさに何予約してんの!
ずるい、私と!」
………もう、やだ。
私はもう関係ないの。
もう、私に構わないでよ。
私は一気に駆け足で走り出した。
そのまま中庭に辿り着く。
ベンチにストンと腰掛ける。
このベンチはいつも勇樹くんと昼休みに過ごした場所。
もう、あの幸せな時間は訪れないんだ。
素っ気なくされても、隣で彼の顔を見つめているだけで嬉しかった。
彼はそんな様子しか見せなかったのに昼休みの時間になると必ず来てくれてた。